横浜観光 旧東海道をゆっくり歩く|歴史と風情に触れる街道散歩旅
江戸の面影をたどる旅——旧東海道の静かな魅力を再発見
「横浜観光 旧東海道をゆっくり歩く」というテーマには、現代の喧騒を離れ、まるで時間を巻き戻すような不思議な魅力が詰まっています。東海道は、江戸時代に徳川家康によって整備された五街道のひとつであり、東京(江戸)から京都までを結ぶ、当時最も重要な幹線道路でした。
そして、この歴史的な大動脈が、現在の横浜市内を貫通していたことをご存知でしょうか。横浜は、日本橋から数えて3番目の宿場「神奈川宿」と4番目の宿場「保土ヶ谷宿」という、二つもの宿場町を擁する交通の要衝だったのです。
もちろん、その多くは現代の交通網や都市開発に飲み込まれ、姿を変えています。しかし、注意深く歩いてみると、そこかしこに残る石碑や常夜灯、かつての松並木、歴史を秘めた寺社仏閣など、旧東海道の面影が今も息づいています。旧東海道を歩くことは、高層ビルが立ち並ぶ現代都市・横浜の風景と、江戸時代の旅人たちが見た歴史的な風景が交差する、特別な時間を味わう旅なのです。
この記事では、横浜市内に残る旧東海道の主要な見どころや、歴史散策は好きでも体力に自信がない方のために、疲れずに楽しめるモデルコースを紹介します。徒歩でしか気づけない小さな神社の境内や、道端にひっそりと佇む庚申塔(こうしんとう)、江戸時代から続く老舗の和菓子屋など、街道歩きならではの深い発見に出会える散歩旅をご提案します。
記事のポイント4つ
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旧東海道の横浜区間(神奈川宿〜保土ヶ谷宿)の見どころを厳選紹介
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観光地化されすぎていない、静かな街歩きが楽しめる
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松並木や旧跡、古地図を手に巡る歴史散策が魅力
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距離・ルート共にシニアにも優しい“疲れない街道ウォーク”を提案
横浜観光 旧東海道をゆっくり歩くルート案内【前半】
まずは、横浜市内における旧東海道のハイライトとなる「神奈川宿」と「保土ヶ谷宿」周辺のスポットをご紹介します。
1. 神奈川宿跡(神奈川区)|東海道五十三次の宿場町のひとつ
JR東神奈川駅や京急東神奈川駅の近くに広がるエリアが、かつての「神奈川宿」です。日本橋から数えて3番目、川崎宿の次に位置する宿場町であり、「神奈川県」の県名の由来ともなった歴史的な場所です。
現在はその多くが住宅地や商店街となっていますが、街道沿いには往時を偲ばせる「神奈川台関門跡」「高札場跡」、そして「慶運寺」「本覚寺」「洲崎大神」などの由緒ある史跡が点在しています。特に慶運寺は、ペリー提督が来航した際、日米和親条約の交渉(横浜応接所での本交渉)に先立ち、艦隊の通訳官であったサミュエル・ウィリアムズが滞在した場所としても知られ、幕末の緊迫した国際交流の舞台でもありました。
このエリアは横浜市神奈川区によって「神奈川宿歴史の道」として整備されており、街道の一角には案内板が設置されています。古地図と現在の風景を比較しながら歩けるのも、この地ならではの大きな魅力です。
スポット情報:神奈川宿跡(神奈川宿歴史の道)
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アクセス:JR「東神奈川駅」または京急「東神奈川駅」「神奈川駅」周辺
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特徴:県名の由来となった宿場町。幕末の歴史にも触れられる史跡が点在し、案内板が整備されていて歩きやすい。
2. 青木橋〜幸ヶ谷(神奈川区)|歴史的坂道と現代建築の融合
神奈川宿を西へ進み、鉄道の線路をまたぐ「青木橋」を越えると、かつての宿場の中心であった「幸ヶ谷(こうがや)」エリアへ入ります。このあたりは「台町の茶屋」として歌川広重の浮世絵にも描かれた景勝地で、高台からは海(当時は袖ヶ浦と呼ばれた入江)を一望できました。
現在は近代的なビルやマンションも立ち並びますが、道の脇をよく見ると古い石垣や風情のある石段がそのまま残されており、都市の中に歴史が幾重にも埋もれていることを実感できます。
幕末にはペリー提督来航の影響で、この高台一帯に外国人居留地が計画された歴史もあり、「神奈川奉行所跡」や、本覚寺に置かれた「アメリカ領事館跡」の案内板も設置されています。住宅地の静けさの中にひっそりと佇む史跡を探しながら歩くのは、まさに歴史散歩の醍醐味と言えるでしょう。
スポット情報:青木橋〜幸ヶ谷エリア
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アクセス:JR・京急「神奈川駅」から徒歩約5分
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特徴:浮世絵にも描かれた景勝地。現代の風景の中に、古い石垣や幕末の史跡が溶け込んでいる。
3. 神奈川台場跡(西区)|開国の舞台となった防衛遺構
幸ヶ谷の丘をさらに登った先、現在の「幸ヶ谷公園」と「神奈川台場公園」周辺には、幕末に築かれた「神奈川台場」の跡地が残っています。これは、黒船来航を受けて江戸幕府が江戸(東京)防衛のために品川などに築いた「台場(砲台)」の一つです。
当時、勝海舟の設計・指揮のもと、海防の最重要拠点として造られたもので、現在でも台地の扇形の地形や防御施設の痕跡を一部確認することができます。高台にある幸ヶ谷公園からは、眼下に広がるみなとみらいの高層ビル群を一望でき、幕末の防人たちが見ていたであろう海の広がりと、現代都市横浜の劇的なコントラストが美しいスポットです。ベンチで腰を下ろし、歴史の転換点に思いを馳せるのも一興です。
スポット情報:神奈川台場跡(幸ヶ谷公園)
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アクセス:JR・京急「神奈川駅」から徒歩約10分(坂道あり)
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特徴:勝海舟が設計した幕末の砲台跡。みなとみらいを一望できる絶景と歴史を同時に楽しめる。
4. 権太坂・保土ヶ谷宿(保土ヶ谷区)|江戸期の景観が最も残るルート
横浜市内で最も旧東海道らしさが残ると言われるのが、4番目の宿場「保土ヶ谷宿」とその先の難所「権太坂(ごんたざか)」の区間です。特にJR保土ケ谷駅の西側に広がるエリアには、現存する松並木や旧街道の面影を残す道、道祖神、そしてかつての商家跡など、江戸時代の旅人気分が味わえる風景が続きます。
「権太坂」は箱根駅伝のコースとしても有名ですが、その名の由来は、坂の上で旅人に名前を聞かれた老人が、自分の名前(権太)を聞かれたと勘違いし「権太坂」と答えた、という微笑ましい逸話が残っています。
宿場の中心地であった「帷子橋(かたびらばし)」付近は、保土ケ谷区による資料館や休憩所(保土ケ谷宿交流館)も整備されています。ウォーキングルートとしても人気があり、無理なく歩ける距離と景観の変化が魅力です。沿道の町並みは観光地化されすぎず静かで、地域に溶け込んだ歴史の息遣いを感じることができます。
スポット情報:権太坂・保土ヶ谷宿
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アクセス:JR横須賀線「保土ケ谷駅」下車すぐ
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特徴:松並木や旧家の面影など、最も江戸時代の街道風景が残るエリア。資料館や休憩所も整備されている。
横浜観光 旧東海道をゆっくり歩くおすすめモデルコース【後半】
ご紹介したスポットを、シニア層の方でも無理なく巡れるよう「疲れない」ことを意識したモデルコースをご提案します。
午前:神奈川宿〜幸ヶ谷エリアをのんびり散策
10:00 JR東神奈川駅 スタート
まずは「神奈川宿歴史の道」の案内板を頼りに、歴史散策を開始。慶運寺や洲崎大神といった主要な史跡を経由しながら、青木橋方面へ向かいます。この区間は歩道が広く平坦で歩きやすいため、無理なく景色を楽しめます。
11:00 街道沿いで一休み
途中、街道沿いの老舗和菓子屋やカフェに立ち寄るのも街道歩きの楽しみの一つ。江戸時代から旅人たちをもてなしたかもしれない場所に思いを馳せながら、地元の銘菓やコーヒーで一息入れましょう。購入したお団子をベンチで食べながら休憩するのもおすすめです。
昼:幸ヶ谷公園で休憩&台場跡を散策
12:00 幸ヶ谷公園でランチ休憩
青木橋を渡り、神奈川駅方面へ。少し坂道を上りますが、その先にある「幸ヶ谷公園」の高台でひと休み。ここからは、先ほど歩いてきた神奈川宿の街並みと、みなとみらいの絶景が広がります。お弁当や軽食を広げるのにも最適です。
12:45 台場跡の見学
食後は公園内の案内板を読み、神奈川台場の歴史に触れましょう。春には桜が咲き誇り、歴史公園としての風情を一層引き立てます。トイレや東屋(あずまや)も整備されているため、シニアや家族連れでも安心して休憩できます。
午後:保土ヶ谷宿〜権太坂ウォークへ
13:30 保土ケ谷へ移動
神奈川駅からJR(京浜東北線・横浜線)で横浜駅へ行き、横須賀線に乗り換えて「保土ケ谷駅」まで移動します(約15分)。無理に全区間を歩かず、公共交通機関を使うのが疲れないコツです。
14:00 保土ヶ谷宿の散策
保土ケ谷駅からは、旧街道の松並木や旧家(問屋場跡など)をたどりながら、権太坂方面を目指します。道中にある「保土ケ谷宿郷土資料館(保土ケ谷宿交流館)」で、当時の宿場の賑わいや構造を知れば、この後の散策がさらに楽しくなるはずです。資料館では、旅籠の構造模型や浮世絵なども展示されており、江戸の旅文化に深く触れることができます。
夕方:帷子川周辺で夕景とともに旅の締めくくり
15:30 帷子橋(かたびらばし)周辺で休憩
保土ヶ谷宿の中心を流れる帷子川。そのほとりにある帷子橋周辺で、宿場町の夕景を想像しながら一息。近くには商家風の建物や和風庭園のある休憩所(保土ケ谷宿本陣跡など)もあり、静かな時間を過ごせます。
16:00 帰路へ
旅の余韻を楽しみながら、保土ケ谷駅から帰路へ。時間に余裕があれば、周辺の小さな神社や、昔ながらの商店街に立ち寄ることで、より深く地域と触れ合うことができます。
横浜観光 旧東海道をゆっくり歩くまとめ
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横浜市内にも、神奈川宿・保土ヶ谷宿という旧街道の歴史が色濃く残るエリアが点在している。
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みなとみらいなどの主要観光地の喧騒を避け、落ち着いた大人の時間を楽しめる散歩旅に最適。
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神奈川宿〜保土ヶ谷宿は、幕末の史跡や江戸の風情、そして現代の絶景が共存する貴重なルート。
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全区間を歩かず公共交通機関を挟むことで、無理のない距離設定となり、60代以上の方にもおすすめ。
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各所に設置された案内板や地図を片手に歩けば、街の表情と歴史がより深く味わえる。
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地元の老舗和菓子や商店、資料館との出会いも、街道歩きの旅の楽しみを一層引き立てる。
次の横浜観光では、現代の賑わいからほんの少しだけ離れて、旧東海道をゆっくりと歩いてみてはいかがでしょうか。
高層ビルの足元に息づく知られざる歴史の痕跡と、街の静けさに癒される、豊かな大人の時間旅行がそこにはあります。